高卒採用において、求人票を学校に配布するだけではなかなか良い採用活動はできません。もちろん制度上は求人票も欠かせない存在ではあるのですが、重要なのはもう一歩踏み込んで「この会社で働いてみたい!」と思ってもらえること。そこで今回は、その「もう一歩」を後押しする重要なツール「会社パンフレット」について効果的な作り方を学んでみましょう!

採用パンフレットって必要なの?

そもそも「採用パンフレットは必要なのか」という根本的な疑問を持たれる方もおられるかもしれませんが、本当に良い採用を行いたいなら「必要だ」と断言して良いでしょう。

求人票は一定のフォーマットにしたがって作られる媒体で、いわば「データ」に過ぎません。他社との差別化も難しく、給与や業務内容、所在地などで判断されてしまいます。しかし、高校生に届けたい情報はもっとたくさんあるはずで、それをカバーできるのがパンフレットです。求人票では伝えきれない社内の雰囲気や、自社ならではの仕事のやりがいなどを「自由に」伝えられる、頼もしいツールだと言えるでしょう。

パンフレットは、高校生に情報を届けやすい媒体

高卒の就職活動は、まだまだアナログ中心

「いまどきは、紙媒体よりもWEBでは?」という意見もあるでしょう。しかし、それが良いか悪いかは別として、高卒採用の世界ではまだまだアナログが中心なのが現実です。まず、パンフレットはもちろん、学校に提出する求人票も紙媒体。郵送か持参で学校に届けます。学校での保存においても、紙をそのままファイリングし、生徒に紹介やあっせんする際も、それらを引っ張り出して使います。

気になった企業を高校生本人が自宅でネット検索することはありますが、それにしても最初にそうした紙媒体の情報から興味を持ち、「じゃあ調べてみるか」という流れになるのが一般的です。この過程を飛ばして「最初からすべてWEBで」という環境が作られていないのが、高卒採用の特徴なのです。

企業側が積極的に情報を届ける「プッシュメディア」が重要

マーケティング上の考え方で「プッシュメディア」「プルメディア」という概念があります。プッシュメディアとは、情報の発信者側(採用活動においては企業側)が主体的に情報を届けるアプローチです。相手方がそれを希望するか否かに関わらず、ある意味で一方的に情報を届けられるため、認知度の向上に向いていると言われます。パンフレットは有力なプッシュメディアの一つであり、TVCMや折込チラシなどもこれに属します。

一方で「プルメディア」とは、情報の受信者側(採用活動においては生徒、先生、保護者側)が、自らアクションを起こして情報を取りに行くアプローチです。あらかじめ受信者側にある程度の興味がなければ成立しません。WEBサイトはその典型だと言えます。高卒採用における高校生側の情報収集は、大学新卒や中途採用と比べて受動的であるため、プルメディア(WEB)一辺倒のやり方は相性が悪いのです。

高校生や先生、保護者の方に見てもらいやすい

「WEBサイトを見ておいてくださいね」と伝えるプル型のアプローチだけでは、残念ながら相手のアクションには結びつきにくいでしょう。一方でパンフレットはプッシュメディアであり、かつ紙媒体として「形がある」ものであるがゆえに、高校生・先生・保護者の方に見てもらいやすいことが強みです。WEBサイトのように「自ら見にいく」というアクションを起こさなくても、初めから形として手元に情報があるため、「ちょっと読んでみるか」という行動につながりやすいのです。学校訪問や説明会で配布しやすいことも強みでしょう。

したがって高卒採用の広報ツールとしては、まずプッシュメディアであるパンフレットでしっかり自社をアピールし、そこで興味を持ってくれた方にWEBサイトを見てもらうという流れが効果的であると言えます。

パンフレット制作の流れ

パンフレットを作るには、当然ながら手順があります。しかし残念なことに、それを無視して(あるいは知らないまま)作られた、あまり魅力的とは言えないパンフレットを見かけることもあります。まずは、パンフレットを作る上で大切なことや、流れについて知っておきましょう。

作ろうとしているのは、カタログ?パンフレット

特に一貫性やテーマもなく、思いつくまま自社の情報を切り貼りしただけのパンフレットは少なくありません。しかしあえて厳しい言い方をするなら、それは「パンフレット」ではなく「カタログ」です。

パンフレットは、自社(や商品・サービス)を紹介し、選んでもらえるようになることを目的としています。対してカタログは、既に自社が選ばれている状態で、その中でどれを買うかという「比較」を目的にしています。別の言い方をすれば、パンフレットは自社を好きになってもらう(知ってもらう)ため、カタログは商品を買ってもらうためのツールだということですね。

そのため、両者は掲載するコンテンツも見せ方も、まったく違います。カタログに必要なのは、均一化・平準化された情報提示や網羅性ですが、パンフレットに必要なのは強弱やインパクトのあるメッセージ性です。伝えるべきことや伝え方が根本的に違うということを間違えず、自分が作ろうとしているものがカタログになっていないか、意識しておきましょう。

コンセプトや目的を明確にする

何のために作るのかを忘れない

そもそも、何のために(カタログではなく)パンフレットを作るのか、もう1度思い出してください。求人票だけでは伝えきれない自社の魅力をアピールし、高校生に自社への興味を持ってもらうことですよね。しかし、忙しさに追われてこれを忘れ、単に「パンフレットという成果物を作る」という作業だけに意識を奪われることがあります。こうなると完成するのは、何となく情報を並べただけの「写真付きで、ページ数の多い求人票のようなもの」、もしくは「カタログ」です。せっかく費用や手間をかけて作るのですから、それではもったいないですよね。こうならないためにも、まずは常に「何のために作るのか」という原理原則へ立ち返りながら、内容も「これで高校生が興味を持ってくれるのか」とチェックする意識を忘れないでください。

高卒採用専用のパンフレットを作るのが望ましい

そういう意味では「既に会社パンフレットはある。改めて採用向けにパンフレットを作らなくてもいいのでは?」という疑問に対しても、答えは「改めて作るべき」です。取引のために顧客に向けて作るパンフレットと、採用のためのパンフレットでは、アピールすべき内容がまったく異なります。もっと言えば、大学新卒・中途採用向けと、高卒採用向けでもメッセージの届け方は違ったものになるのです。費用はかかってしまいますが、「高卒採用向け」のパンフレットを単体で作られることを強くおすすめいたします。

どんな高校生に見てもらいたいか、ターゲットを設定

万人受けすることよりも、自社と合う1人にメッセージを届ける意識で

パンフレットを制作する際には、ターゲットを明確にすることから始めましょう。例えば「継続力がある方」「素直な方」「問題発見能力の高い方」「コミュニケーション能力のある方」など、「どんな人材を求めているか」から始まって、そうした人材に響くアピールポイントや情報を伝えていきます。

逆にあまり好ましくないのは「浅く広く」のアプローチです。例えば、仕事とプライベートをはっきりと区別したい方に「休日もみんなでよく遊びに行きます!」「社内のレクリエーションが盛んです!」とアピールしても逆効果でしょう。それを危惧し、控えめで万人受けするアピールをするくらいなら、初めから「そういう方は、我が社には合わないな」と割り切るくらいでちょうど良いのです。「自社の社風や理念に合わない人材に100人来てもらうよりも、自社と相性の良いたった1人にメッセージを届けたい!」という意識で臨みましょう。

ペルソナ設定をしてみよう

求人に限らず、広告物においては「みなさん」ではなく「あなた」に語りかけるのが効果的だと言われます。そこでよく使われるのが「ペルソナ設定」です。上述では「ターゲット」と表現しましたが、その人物像をより深く個人レベルまで落とし込んだものが「ペルソナ」だと考えてください。大まかな人物像ではなく、1人の人物をイメージする感じですね。

例えば「ものづくりが好きで、向上心のある方」というのは「ターゲット」ですが、「ものづくり、特にゼロから何かを生み出すことが好きなアイデアマン。部活動では厳しい練習に耐え抜いてきた。市内在住で、趣味は模型作り。負けず嫌いで上昇志向も強いが、正義感が強く人を蹴落とすようなことは大嫌い。進学よりも早く社会で活躍したいとの思いから、高卒就職を志す」といった細かい設定まで行うのが「ペルソナ」です。架空の人物ではありますが、目の前に本人がいるつもりで「この人物に自社への興味を持ってもらうには、何をどんなふうにアピールするのが効果的だろう」と考え、それに基づいてパンフレットを作っていくのです。

パンフレットに掲載するコンテンツの設計

ターゲット(あるいはペルソナ)の設定ができたら、パンフレットに何を掲載するかを決めましょう。このとき、単に情報を羅列するのではなく、ターゲットやペルソナにとって魅力的なことは何か、意識するのを忘れないでください。

例えば「自分(高校生)がこの会社でどのように成長できるのか、不安に感じているだろう」という想像ができれば、「育成プランをきちんと掲載しよう」「システマチックな解説だけでなく、親切丁寧に教えることもアピールしよう」という発想になるはずです。自社が伝えたいことと、高校生(先生・保護者)が知りたいことは、必ずしも一致するとは限りません。どちらかに偏りすぎることなく、バランスを大切にしてください。

なお具体的な掲載推奨コンテンツの事例は、下記「パンフレット作成、4つのポイント」でご紹介します。

採用活動スケジュールと制作スケジュールの確認

「いつから作り始めれば良いのか」は、パンフレットのページ数やコンテンツの見せ方にどれだけ凝るかによっても異なるためケースバイケースです。外部の制作会社に依頼する場合、おおむね3カ月は見ておきましょう。7月の求人活動解禁と同時にパンフレットも配布したいところですから、そこから逆算すると3月くらいには着手するのがおすすめです。

パンフレットを作る際には、上述のようにターゲットやコンセプトの設定が欠かせません。制作会社はこのあたりをヒヤリングして、ベストな形でそれを表現するにはどうしたら良いか、企画を練っていきます。したがって、「求める人材像」「自社のアピールポイントの整理」などは、パンフの制作開始(3月)までに済ませておくのが望ましいと言えます。ただしこれらはいずれにせよ、採用活動上で欠かせないステップです。パンフレットを制作するか否かに関わらず、早めに対応しておきましょう。

【高卒採用】パンフレット作成、4つのポイント

どんな業種であれ、どんな人材を求めているのであれ、パンフレットの掲載事項やデザインに必要な要素は、共通している部分がいくつかあります。ここではそのポイントを4つ紹介いたします。

簡潔で分かりやすい内容

あれもこれも載せようとしない

パンフレットを制作していると陥りがちなのが、「あれも載せたい、これも紹介したい」と欲張ってしまうことです。それだけ「自社を知ってもらいたい!」という情熱の裏返しではあるので気持ちはよく分かるのですが、「何でもかんでも」というスタンスは逆効果です。かえって情報が散漫になり、分かりにくくなります。コンセプトやターゲットに基づき、必要な情報をコンパクトに伝えるようにしましょう。

アピール度が低いと判断したコンテンツは、思い切って削除することも必要です。「何を載せるか」は大事ですが、「何を載せないか」の判断も同じくらい大事なのです。

「読み飛ばされるのが普通」だと心得るべし

学校の先生のもとには、求人票と共に大量のパンフレットも届きます。このとき先生方は、1冊ずつ丁寧に熟読する時間はありません。パラパラとめくりながら、生徒に紹介できるだけの必要十分な情報を得ようとします。それは高校生本人も同様です。特に、小さい文字でこれでもかと情報を詰め込んだパンフレットは、その時点で読む気が失せてしまいます。逆に自分が何らかの商品のパンフレットを読む立場を想像すれば、気持ちが分かるのではないでしょうか。

手間ひまかけて作った側としては「細部まで読み込んで欲しい」という気持ちになりますが、消費者(先生や高校生)は「読み飛ばすもの」だと思っておくぐらいでちょうど良いです。だからこそ、簡潔で分かりやすい情報提供が欠かせないのです。まずは興味を持ってもらうことを優先し、さらに詳しい情報はWEBサイトを見てもらうという動線を意識しましょう。

職場の雰囲気が分かる

パンフレットにできて、求人票にはできないことの最上位が「職場の雰囲気が分かる」ことです。求人票はフォーマット化された文字情報であるため、言わば“スペック”の情報に過ぎず、こうした「雰囲気」のようなものを伝えることが苦手です。

しかし高校生にとって職場の雰囲気は、就職先を選ぶにおいて欠かせない要素です。社員が明るく楽しそうに働いているか、人間関係は良さそうかなど、しっかり見ています。それを伝えるため、パンフレットでは、実際に社員が働いている場面などを写真で見せていきましょう。文字で解説するより一目瞭然で効果的です。

なおこのとき、フリー素材などを使って「会議をしているふう」「作業をしているふう」の写真を使う会社もありますが、あまりおすすめできません。できるだけ本物の社員を使って、本物のオフィス・現場で撮影するのがベストです。高校生も自分がそこで働いている姿をイメージしやすく、信憑性ががぜん違ってきます。

読み手目線の内容やデザイン

ターゲットやペルソナの設定とも関連してくるのですが、パンフレットの読者はまず「高校生」を意識しましょう。そして、高校生が分かりやすい言葉づかいや、興味を引きやすい写真、デザインを意識することが大切です。

確かに、学校の先生向けの内容でパンフレットを作るほうが良いという意見もあります。高卒採用の最初の窓口は先生だからです。しかしいくら先生が強く勧めても、当事者である高校生本人がその会社に魅力を感じ、正しく理解していなければ、ミスマッチを生むだけです。また、合同企業説明会などでも、パンフレットを見ながら自社をプレゼンテーションする機会が増えました。そうした観点からも、やはりパンフレットは高校生目線で作ることが望ましいと言えます。どうしても先生に伝えたいことがあるなら、先生目線で自社の魅力をまとめた資料を1枚作り、パンフレットと一緒に渡せば良いでしょう。

なお、保護者は我が子の進路決定に際してそこまで強い主導権を持たず、助言したり承認したりするポジションであることが多いです。読者設定としての優先度は低いと判断して問題ありません。

先輩インタビューを載せる

先輩社員の声(インタビュー)は必須事項です。「何をするかより、誰とするか」という言葉もありますが、高校生にとって、自分が入社後にどんな人たちと一緒に働くのか、彼らと良い関係が築けそうかは、ときに業務内容よりも重要度の高い要素になることさえあります。

また、高校生は先輩たちの姿に、自分の数年後の姿を重ね合わせて見ています。したがって「自分もこんなふうになれる(なりたい)」と思ってもらえることが重要です。キャリアアップの過程や仕事のやりがい、休日の過ごし方など、明るい未来が描けるようなコメントを掲載しましょう。写真も、証明写真のような味気ないものではイマイチ。満面の笑顔や、真剣なまなざしで働いているシーンの写真など、人間味を感じられるもののほうがよりリアルで魅力的です。

なお、登場してもらう先輩は、同じく高卒採用で頑張っている若手社員に協力してもらえるのがベターです。高校生がより親近感を持ち、自分を投影しやすくなります。

パンフレット制作も可能!高卒採用はハリケンナビにお任せ

パンフレットの改善が成果に繋がる

まだ採用パンフレットを作っていない会社は、これを機にぜひ制作してみてください。採用活動にプラスはあっても、マイナスにはなりません。

また、既に作っている会社も定期的に内容の見直しやリニューアルを行いましょう。1年に1回、必要な部分を差し替えるだけでも構いませんが、新規事業の開始など会社にとって大きな転換期となるときや、人材投資に力を入れたいときなどは、ゼロから新しいものを作るのも手です。

パンフレット制作のご相談も承ります

パンフレットは自社内でも制作は可能ですが、やはり編集物や広告物の知識・制作スキルなどを考えると、専門性を持つプロに依頼したほうがクオリティは高くなります。費用はパンフレットの内容や印刷部数によっても異なるので一概には言えませんが、社内で内製する時間的コスト・人事コストとのバランスから考えると良いでしょう。制作を外注する代わりに、そのぶん社員は他の業務に労働力を充てることができるはずです。

ハリケンナビでは、採用パンフレット制作も承っております。制作プロダクションやクリエイターらと連携し、費用や納期なども貴社の要望に寄り添いながら制作することが可能です。ご興味のある方は、ぜひご活用ください。

まとめ

良い企業風土を作るだけでは、良い採用活動にはつながりません。「そんな良い企業がここにあるよ」と知ってもらうこととの両輪で、初めて成り立ちます。

しかし、求人票だけでその魅力を伝えていくのは難しいもの。パンフレットなど効果的なツールを作って、しっかり自社をアピールしていきましょう。相応の費用や手間のかかることではありますが、より良い人材の確保は、企業にとって明日への投資行為です。一過性の経費と見なすのではなく、長期的な視野に立った情報発信を行っていきましょう。