近年、高校新卒の採用に熱心な企業が増えています。しかしそれは、求職者の売り手市場が続き人材獲得の競争が激しくなる中で「本当は大学新卒者が欲しいけど、高校生で妥協している」からではありません。高卒採用には高卒採用の魅力がたくさんあるためです。

そこで当記事では他の採用と高卒採用との違いや、高卒採用のメリットとデメリットについてまとめてみました。

高卒採用とは?

同じ「採用活動」を行うのでも、高卒採用は少し独特です。大学新卒採用や中途採用にはない、いくつかの傾向や特色を持っています。独自のルールなどもあるため、しっかりと把握しておくことが大切です。

高卒採用の特徴

高校生は「守られるべき」対象

法改正がなされ18歳から成人扱いになったとは言え、高校生のほとんどが、社会的にはまだまだ経験が浅く未熟な存在です。また、彼らの本分はあくまで学業などの高校生活であり、就職活動ではありません。つまり、少なくとも高校生であるうちは、社会や大人が「守ってあげなければならない」存在だということです。

大前提として、高卒採用はこの視点に立って制度設計されていると考えておくと良いでしょう。下記のような一見不可解なルールも、その意図や目的がご理解いただけるはずです。

独自のルールがある

高卒採用にはいくつかの独自ルールがあり、高校生を守る視点から行政・企業・学校の三者の間で厳しく取り決められています。一般に「三者間ルール」や「三者協定」と呼ばれるものです。

具体的には「求人募集できる期間が一律に定められている」「ハローワークを経由する」「高校生本人と直接連絡を取れない(学校が斡旋する)」「高校生が応募できるのは原則として1社のみ(一人一社制)」「書類のみで選考してはならない」などが挙げられます。

高卒採用のメリット・デメリットとは?

上述のように、高卒採用には独自のルールなどが存在します。それが高卒採用のメリットを生み出している一方で、同時にデメリットも存在しているのが事実です。それぞれ見てみましょう。

高卒採用のメリット

内定辞退率が低い

高卒採用は、学校が企業に生徒を「推薦」する形を取るのが基本。このとき用いられるのが「一人一社制」で、言葉の通り「一人の高校生が応募できるのは一社まで」とするものです(適用しない地域もある)。また学校の信用にも関わるため、内定後の辞退はよほどのことがなければ認められません。大学の推薦入試などにおける専願と同じような仕組みだと思って良いでしょう。

そのため高校生もアドバイスする先生も、応募する企業は吟味したうえで決定します。「とりあえず応募しておくか」という浅い動機ではないため、本人の入社意欲も高いことが多いのです。なお、高校生が複数の企業に同時に応募できるのは、11月以降に行われる二次募集からになります。

採用コストを抑えられる

高卒採用は、採用コストが安くなる傾向があります。ハローワークの求人票と学校からの推薦という形が基本となるため、大学新卒採用などと比べて大規模な求人広告を出す必要性が低く、広告費を抑えやすいためです。

また、採用にはこうした外部コストの他にも、担当者の人件費などに相当する内部コストや、採用業務に取られる時間コストも存在します。しかし一人一社制や、「7月に採用活動解禁、9月には選考・内定」という統一された短期スケジュールの影響で、これらも低く抑えることが可能です。内定辞退を防止するための内定後フォローなどにも、そこまで多くの費用を必要としないでしょう。

リクルートの「就職白書2020」によると、新卒社員を一人採用するための費用は平均で93.6万円というデータがありますが、高卒採用ならより低くなるはずです。

素直でまっすぐな人材が多い

高校生の社会経験が浅いことは、即戦力という意味ではもの足りなく感じるかもしれません。しかしそれは、同時に大きな強みでもあります。例えば中途採用で入社した社員が、「前の会社ではこうだった」と自己流を貫き、自社のやり方に合わせてくれず困ったという話は「採用あるある」のひとつ。

しかし高校生は、企業や業界、業務について変な先入観や癖がついておらず、素直で真面目に取り組んでくれます。良い意味で「指示されたことを、指示された通りにやろう」という姿勢が強いです。

とは言え、社会人としていつまでも受け身な姿勢ばかりでは困りますよね。そうした課題も踏まえて、最近は高校で「探究学習」が熱心に行われています。一般の教科学習と異なり、テーマ(例:地元地域の人口減少を食い止めよう、など)に基づき、正解のない問いに対して自分で調べたり、解決策を考えたりする学習です。つまり最近の高校生は「自分の頭で考える」トレーニングを受けているということ。仕事に慣れてきたら、ぜひ彼らの若い感性を活かしてアイデアを出してもらったり、社内の問題解決にも参画してもらったりすると良いでしょう。

学校内で評判が高まれば、継続採用の可能性が高まる

高卒採用は、基本的にすべて学校の先生を介して行います。そのため、私たち企業側と先生方との間の信頼関係は非常に重要なポイントです。先生方からすれば、かわいい教え子たちをあまりよく知らない企業に紹介したくないのは当然。学校訪問などでこつこつと人間関係を築き、先生方に「この会社なら安心して勧められる」と思っていただけるようにすることが大切です。

逆に、そうして1度信頼関係を築き、その学校からの採用実績を重ねていれば、継続的で安定的な採用に繋がりやすくなります。こちらも、付き合いが長くなればその学校の生徒層がだいたい分かってくるので、「この学校の生徒なら安心」と考えることができるでしょう。まさに一石二鳥なのです。

高卒採用のデメリット

早期離職率が比較的高い

厚生労働省の調査によると、新規高卒者の離職率は1年目で15.1%、2年目で11.7%、3年目で10.2%。合計で37.0%が3年以内に辞めていることになります。対して大学新卒では1年目で10.6%、2年目で11.3%、3年目で10.4%、3年以内での離職率はトータル32.3%です。

両者を比較して注目したいのは、1年目の離職率が高卒採用では特に高いことです。2年目、3年目に有意な差が見られないことからも、余計に目立ちます。

原因としては、大学生と比べて自身のキャリア(生き方)に対する掘り下げが不十分であることが考えられます。高校でも「キャリア教育」と称してさまざまな指導は行っていますが、業界の研究も、自己分析も、大学生のそれと比べればまだまだ甘いのは否めません。そのため、せっかく就職したのに会社の中に居場所ややりがいを見つけられず、違和感を抱いて早期離職してしまう若者が一定数いるのです。

一人一社制によるミスマッチが起こる可能性

採用におけるミスマッチとは、企業側と社員(人材)側との間で、認識やニーズのずれが生じることを指します。要は、お互いに「思っていたのと違っていた」状態です。早期離職とも関連してきますが、高卒採用では、このミスマッチが起こりやすいと指摘されています。

主な原因は一人一社制の影響です。単願性で内定を得やすく、より多くの高校生に就職のチャンスを広げるメリットがあるとは言え、選択肢が狭くなるというデメリットもあります。学校の推薦を得るために校内でのセレクションが行われる場合も多く、ここで選に漏れれば、第2希望・第3希望の企業への応募に回らざるを得ません。第1希望の企業に選考してもらえるスタートラインにすら立てないのです。「安定した就職内定」が優先されるあまり、自由な職業選択が奪われているとする見方もあります。

こうした背景もあり近年では、厚生労働省や文部科学省が、一人一社制の見直しを求めるようになってきました。廃止する自治体も散見されますが、全国的にはまだまだ道半ばと言わざるを得ないでしょう。

高卒採用を成功させる3つのポイント

さまざまなメリット、デメリットがある高卒採用ですが、やるからにはやはり良い人材を確保したいもの。独自のルールや文化もあって、他の採用活動とは毛色が異なるからこそ、それに応じた採用戦略が欠かせません。ここでは、高卒採用を成功させる3つのポイントをご紹介いたします。

採用の目的や求める人材像を明確にする

貴社では、なぜ新卒採用を行うのでしょうか?その中でも、なぜあえて高校生を採用するのでしょうか? まずはその原点に帰って考えてみましょう。「毎年行っているから」や「人員が足りないから」といった漫然とした目的意識で行っていては、良い採用に繋がりません。

そのため、まずは採用の目的を明確にしましょう。例えば、自社の中で具体的にどんな部分で戦力になってもらいたいのか、どんな問題を解決したいのか。あるいは社内の年齢構成や、技術・ノウハウを継承していくことを考えると、目先だけでなく中長期のビジョンに沿った人員充足も欠かせません。

そこで、こうした目的や目指すべきゴールを、はっきりと言葉にして書き出してみましょう。漠然としていた採用目的が具体的に明文化できるのでおすすめです。「目的」が明確になったら、そのピースを埋めるためにはどんな人材が必要なのか、おのずと条件も浮かび上がってくるはず。それをもとに採用活動を行っていくのが成功のカギです。

自社を深く理解してもらう機会を増やす

高卒採用は、企業が高校生に直接コンタクトを取ることができません。個人にメールや広報物を送ったり、電話をかけたりして「ぜひ我が社へ!」「我が社にはこんな魅力があります!」と、個別アピールすることができないのです。逆に高校生からしても、企業を深く知るチャンスは限られていると言えます。

したがって、ルールの範囲内でいかに高校生との(間接的な)接触を増やし、少ない機会の中で自社をアピールできるかが重要です。具体的には、しっかり高校訪問を行って先生方と関係を築くことや、求人票以外の採用ツール(採用パンフレットや採用WEBサイト)の充実、応募前職場見学の実施などが挙げられます。

求人解禁前に高校訪問を行う

上記の「高校訪問」は、求人活動の解禁前から行っておきましょう。高卒採用は7月から解禁され、求人票を学校に提出することができるようになりますが、7月になって初めて訪問するようでは遅いと考えておくくらいでちょうど良いです。

「7月から解禁なのに、それではフライング(違反)になるのでは?」と思われるかもしれませんが、安心してください。実は、7月以前も学校を「訪問すること自体」は禁止ではありません。進路担当の先生へのご挨拶や、今年度の就職希望者数を尋ねるなどの情報収集程度であれば、採用活動とは見なされないからです。こうして事前にしっかり足を運んで現状を把握したり、先生方と人間関係を築いたりできていれば、いざ7月の解禁を迎えたときにスピード感を持って動くことができます。

【まとめ】高卒採用にお困りの採用担当者の方は、ぜひハリケンナビへ!

さまざまなメリットがある反面、独特のルールや慣習もあって、求職者(高校生)との接点が持ちにくいのが高卒採用の特徴です。重要なのは、定められた統一スケジュールにのっとり計画的に採用活動を進めていくことと、どれだけ高校生に対して自社を認知してもらえるかだと言えます。

しかし、何をどこから始めればいいのか、より効果的に自社の魅力を届けるにはどうしたら良いか分からないと言う方も多いでしょう。そんなときは、ぜひハリケンナビの各種サービスをご活用ください。

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